Posted on May 1, 2023
一週間単位で日記を書くと、書くことがないときは何もかけなくて無になるが、かけることがあるときは複数書くことになる、というのがよい。一つのトピックに絞らなくていいことが日記の良さだと思う。
生活。若干週のはじめに乱れたような気がするが、終盤は立て直したと思う。今週はまるまる休みで、来週から色々始まるのでそこそこの不安があるが、休みのときに考えても仕方ないのであまり気にしないことにする。
本。二冊ほど駆け込みで読んだ。近所に小さい本屋があることにまた気づいたのでそこで本を買ったのだった。建築系の本屋さんらしいのだけど、普通の本の品揃えもよかったなと思う。小説本や俗っぽい本がおいてある本屋のほうが信頼できるところがある。なぜなのかはわからないが。
読んだのは谷川俊太郎の「ひとり暮らし」と宮地尚子の「傷を愛せるか」。「ひとり暮らし」はタイトルが良くて買ったが、なかなか良かった。俗っぽさを作品の中にうまく出せるのは、それをかなり見ているからだというのはわかってはいてもエッセイでの冷静さを見ると驚いてしまう。生活のほうが先にくる、という考え方はかなり分かるなと思っていて、どのようにして金を稼ぐかという話を淡々とするのが、現代の攻略的な考え方とも高潔な考え方とも違っていて面白かった。日記のところが特に良くて、若々しさがある人特有の向こう見ずな前向きさはあまりないのに、やっていることを冷静に分析すると非常に活発なのがギャップとして面白かった。個人的に詩は面白いとは思うもののそこまではまらなかったが、エッセイは総じて良かったと思う。
「傷を愛せるか」は精神科医かつ大学教授のエッセイで、エンパワメントやケアの話が多めなのかと思っていたが、割合そこに終始しない話が多く面白かった。結論にたどり着くまでのためらいの形で終わるエッセイの多さが表題へと確かにつながっていたと思う。シンプルに経験集としても面白かった。どちらも総じて良い本だった。本が読めなくなったときはエッセイを読め、という過去の自分のアドバイスは改めて正しい。
音楽。阿部芙蓉美のライブに行った。能楽堂でやるということで見に行った。阿部芙蓉美を知ったのがもう四年とか前になるので、思うとなかなかのスパンではある。ただ、個人的にそういう感情を詰めて見に行くアーティストではないだろうなと言う予感があったのでなんとなくリラックスして行ったが、これにより若干ウトウトしながら見るライブになってしまった。こんなことを言ったら殴られるかもしれないが、ウトウトしながら見るライブは最高。ボーカルマイクが拾う範囲をかなり大きくしているからか、マイクから少し離れて歌うことができていて、そこが面白かった。なんというか、音に不安なところがない人なんだろうなと感じた。小さくなったり聞こえなかったり完全ではない状態になるのを許容できている感じが面白い。声が完全再現だったので、それに裏付けされている部分もあるとは思う。
音楽その2。ArtTheaterGuildのワンマンを見に行った。見に行くかをかなり迷っていたが、見に行ってよかった。
ここからはかなり個人的な話になる。大阪のライブも良かったのだけど、なんとなく今まで見てきたArtTheaterGuildのライブとの乖離のようなものを個人的には感じていて、少しずつ距離を取ることになるのかもしれないなと思っていた。これは正確にはpicnicのときから感じてたことだと思う。色々理由はあって、そもそもATGのライブを気軽に見に行ける状態じゃなくなったりとか、東京と京都で街を離れていたとか、色々他のバンドも聞くようになって音楽の趣向が少し変わったとか、もろもろの積み重ねだろうなと思っていた。多分それは間違っていなかったと思うんだけど、その一方でそれは本質的な理由ではなかったなと思う。
すごく傲慢なことを言うけれど、HAUGAはどうしようもないぐらい「俺」のアルバムだったし、同じようにその時聞いていたArtTheaterGuildも俺のための音楽だったように思う。それは彼らがMCで喋ったように、彼らの音楽が彼らのために向いていたから、その音を拾うことのできた自分にとっても、彼らの音楽が自分たちのものになり得たのだろうと思う。それの転機になったのは「鉄紺と黄緑」だろうし、それを私も聞いたときにはわかっていたつもりでいたのだけど、実際にはちゃんとわかっていなかったんだろうなと思う。彼らが外に開けていくことへの戸惑いがずっとあって、でもそれを改めて理解して受け入れることのできたライブだった。自分のためのものではないと改めて理解して、それでもなお彼らの音楽が好きでいられるのは嬉しいなと思う。楽しかった。いいライブだった。
音楽的な話をすると、全体として演奏がやっぱ良くなっているなと思う。もとからテクニックは十分あるタイプのバンドに見えていたし、その辺の抑え方が面白いなと思うけど、今思うとそれは内向きだったのが影響していたのかもしれない。ギターが前に出る瞬間の自然さとか、過去にもましてドラムが存在を主張しない(しかし浮かび上がってくる)のとかが良かった。過去の曲もやはり音源が物足りなくなるぐらいよいアレンジが多く、再録してくれ〜の気持ちになる。二回アンコールで同じ曲やるのも二年前のワンマンで見てよかったなぁと思ったのを思い出した。
日記にしては感傷的なことを書きすぎてしまった。たまにはそういうことがあってもいいだろう。
三つ編みを解いてみたんだ
目隠しの底
本当は知っていたんだ
何が欲しかったのか